2012年3月
1.国名・都市名
タイ王国(バンコク、チェンマイ、パタヤ他)(国際電話国番号66)
2.公館の住所・電話番号
3.医務官駐在公館
4.衛生・医療事情一般
タイ王国は国土の大部分が熱帯モンスーン気候に属し、地方によって季節が異なりますが、バンコクの場合、11月から2月までの乾季、3月から5月までの暑季、6月から10月までの雨季の3つの季節に分けられます。乾季は最高気温が30℃前後で、平均湿度も50%前後と低く、比較的過ごし易いですが、大気汚染と相まって、一年で一番カゼ等の呼吸器疾患の多い季節です。暑季は最高気温が38℃から40℃に達し、外を歩くと疲労し易く、十分な休養が必要です。雨季は、暑季に比べ気温は下がるものの、湿度が高く、食中毒などを起こし易い季節です。
医療事情は、地域及び個々の医療施設によりかなり異なりますが、主要都市の公立基幹病院や代表的な私立病院では概ね良好です。バンコクでは、代表的な私立病院の医療水準はかなり高く、日本の病院と比較しても遜色はないと言えます。それらの病院では、日本の医学部を卒業した医師或いは、日本の病院で研修経験のある医師又は看護師などが勤務しています。また日本語通訳(日本人又はタイ人)などを勤務させ、専用窓口を設けるなど、日本人受診者の便宜を図っていますので、受診の際は、それらの窓口に事前に連絡いた方が、待ち時間などが短くなることが期待できます。
なお、私立病院では治療費等は各々の病院が独自に定めており、概して日本と比して、安価とは言えませんので、支払い時のトラブルを避けるためにも、事前に料金等を確認するか、または海外傷害保険などの保険が適用されるか確認するなどの注意が必要です。
水道水をそのまま飲料用として用いるのは通常不適当とされています。また、タイ保健省発表の疾病統計では、最も多い病気は「急性下痢症」で例年、100万人以上が罹患しています。それに、(集団)食中毒および何らかの消化管感染症を加えますと150万人程度となります。したがって、食品衛生を含めた衛生状態は決して良いとは言えませんので、外食などをする際には十分な注意が必要です。
5.かかり易い病気・怪我
タイ保健省の疾病統計によれば、患者数の多い病気(上位10疾患)は次のようになっています。
順位/年 | 2007年 | 2008年 | 2009年 |
---|---|---|---|
1 | 急性下痢症 1,290,627(83) | 急性下痢症 1,256,711(49) | 急性下痢症 1,284,148(65) |
2 | 不明熱 230,212(23) | 不明熱 239,874(11) | 不明熱 306,650(7) |
3 | 肺炎 142,250(1043) | 肺炎 140,276(968) | 出血性結膜炎 217,384(0) |
4 | 食中毒 123,577(7) | 食中毒 112,260(3) | 肺炎 146,065(1156) |
5 | 出血性結膜炎 104,364(0) | 出血性結膜炎 91,383(0) | インフルエンザ 120,400(231) |
6 | デング熱 65,581(95) | デング熱 89,626(102) | 食中毒 103,420(1) |
7 | 水痘 63,094(1) | 水痘 76,750(3) | 水痘 89,246(3) |
8 | 結核 33,849(197) | 結核 34,328(184) | デング熱 56,651(50) |
9 | マラリア 30,889(38) | マラリア28,902(36) | チクングニア熱 52,057(0) |
10 | 赤痢 19,026(2) | インフルエンザ 20,881(2) | 結核 40,051(176) |
数字は患者数、括弧内は死者数
出典:タイ保健省 ANNUAL EPIDEMIOLOGICAL SURVEILLANCE REPORT
(1)急性下痢症は頻繁に見られる疾患です。外食の際は衛生管理の行き届いた店を選ぶ、食料品の保存管理・飲料水(氷を含め)に注意をすることなどが必要です。また、調理してから時間のたった食品や十分に加熱していない海産物、特に貝類は危険です。
(2)出血性結膜炎はウイルスによる結膜炎です。バンコクでは、特に雨季後半の8月から10月にかけて流行します。1週間程度で自然治癒しますが、外出後の手洗い、家族で別々のタオルを使用するなどの注意が必要です。
(3)デング熱は夜明けから日没までに活動する蚊(ネッタイシマカ、ヒトスジシマカなど)が媒介するウイルス性感染症(ヒトからヒトへは感染しません)です。ワクチンなどの予防法がなく、蚊に刺されないことが唯一有効な予防法です。例年、雨季に全国的な患者の発生がみられます。一般的に3~15日(通常5~6日)の潜伏期間のあと、突然の発熱で発症します。熱は38~40℃程度で5~7日間持続し、頭痛、特に目の奥の痛み、関節痛、筋肉痛、発疹を伴います。また軽い皮下出血が足腿部、腋下、手のひらに発熱期の最後や解熱後に現れることがあります。一般に対症療法だけで特効薬はありませんが、特別な治療を行わなくても軽症で済む例が多く、致命率はそれほど高くはありません。
(4)結核は、毎年新たに数万人が罹患しています。HIV/AIDSとの合併で死亡数が多くなっておりますが、数字的に見ても注意が必要な感染症です。
(5)マラリア汚染地域は、ミャンマー国境地帯(特にメーホンソン県、ターク県等)とカンボジア国境地域に限定しており、バンコクやチェンマイなどの都市部、プーケット島やサムイ島、パタヤなどのリゾート地では感染の危険は極めて低いとされています。
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